疾患別リハビリテーション概要紹介
救命救急センター対象
重篤な疾患を有する方や、外科・心臓血管外科手術後など厳密な全身管理を必要とする方が、救命センターに入室します。人工呼吸器などの生命維持装置が装着されるとベッド上での安静を余儀なくされ、身体・精神機能に関する合併症を生じる可能性が高くなると言われています。全身状態が安定していない場合でも、積極的にリハビリテーションをすすめるため、当院では救命センターに理学療法士が常駐し、早期から安全で効果的なリハビリテーションを提供しています。
心大血管疾患対象
対象: 心不全、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞等)、弁膜症、大動脈解離、不整脈
心臓血管外科術後(冠動脈バイパス術、弁置換術後、)、末梢血管疾患、肺血管疾患など
入院直後や術後翌日から、医師の治療効果を助長することや、二次的な合併症(肺炎や無気肺、筋力低下によるADL低下等)の予防を目的に、早期からリハビリ介入しています。ベッドサイド~歩行までの基本的動作訓練、自転車エルゴメータを使用した有酸素運動、器械を使用したレジスタンストレーニング、調理等のIADL訓練を患者の状態に合わせて実施しています。運動時の血圧や脈拍等のバイタル測定、不整脈等をモニタリングしながら、安全なリハビリテーションを提供することを心掛けています。また、退院後の生活を見据えて、他職種とともに生活指導や教育等も行っています。
脳血管疾患等対象
対象: 脳血管疾患:脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、急性硬膜下血腫など
神経筋疾患:多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症など 神経症状を有す脊髄疾患
また、当院を退院される場合は、退院後の生活を想定したカンファレンスや家屋評価などを実施します。自動車運転の再開を希望される場合は、本人・家族指導、運転能力の評価を基にして運転免許センターや指定自動車教習所等への相談内容を検討します。
廃用症候群対象
対象: 急性疾患等(腎不全など腎尿路生殖系の疾患、低ナトリウム血症などの代謝性疾患、肝硬変・
腸閉塞など消化器系の疾患等)に伴う、安静によって一定程度以上の基本動作能力、応用動作
能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来している患者
廃用症候群は、疾患等により心身機能が不活発になることで生じます。長期間安静状態を強いられると、全身の骨や筋肉、臓器の機能が低下します。また、全身の運動機能が低下すると倦怠感や精神活動面の鈍化により、意欲の低下が生じます。
そのため患者の状態に合わせて、離床時間を増やしたり、立ち上がりや歩行の練習等も行います。できるだけ早期に元の生活に戻れるよう、日常生活活動能力の状態をみて、必要な練習や環境調整を行います。
運動器疾患対象
対象: 主に整形外科の術前後の患者に関わり、疾患によって関わる職種が異なります。
地域特性として高齢者の方が多く、高齢者に認められやすい骨折の術後(必要に応じて術前)や
変性疾患に対して、リハビリテーションを多く実施しています。
〔理学療法の対象疾患〕
予定手術:肩関節腱板断裂に対する腱板修復術・人工肩関節置換術、変形性股・膝関節症に対する
人工股関節・膝関節置換術、脊柱菅狭窄症に対する椎弓切除術・椎体間固定術 など
外傷:大腿骨近位部骨折・脊椎圧迫骨折・脊髄損傷・四肢の外傷 など
〔作業療法の対象疾患〕
ハンドセラピィ:上肢の骨折・腱損傷・末梢神経障害など
脊椎・脊髄疾患:腰椎圧迫骨折・腰部脊柱菅狭窄症術後・脊髄症・脊髄損傷など
股関節疾患:人工股関節置換術後・大腿骨近位部骨折など
また、当院には人工関節センターもあり、専門医師と連携しながら理学療法/作業療法を実施し、自宅退院を目指します。
また、ハンドセラピィにおいては、手外科医と連携しながら、術前評価やSplint(手の装具)作成を含め、入院時に限らず、外来でも作業療法を実施しています。
呼吸器リハビリテーション料対象
対象:呼吸器疾患(肺癌や胃癌の術前後を含む)
小児リハビリテーション対象
対象:NICU; 低酸素脳症、超/極低出生体重児、早期産児、重症仮死、染色体異常 など
一般病棟; 呼吸器疾患(喘息・肺炎・急性気管支炎)、脳血管疾患(脳炎後遺症、脳腫瘍)
長期臥床による廃用症候群、小児がん など
外来; 脳性麻痺、神経筋疾患、発達障害(自閉症スペクトラム障害、学習傷害、注意欠陥・
多動性障害)精神発達遅滞 など
新生児集中治療室では早く生まれられた赤ちゃんに対してポジショニングや哺乳練習、相互作用の促進を図ります。
一般病棟に入院中の子どもも対象で、喘息や肺炎などの呼吸器疾患で入院された子どもたちに対しては早期より呼吸理学療法を行います。また、脳炎後後遺症、脳血管障害などの中枢性疾患、心疾患および手術後の子どもに対しては、出来る限りの機能回復や改善を目指して、病棟内やリハビリ室にて訓練・治療を行ないます。
がんリハビリテーション対象
対象:がんと診断された方
がんの療養におけるリハビリテーションは、医師による治療と並行して行われるため、病状の変化をはじめ、あらゆる状況に対応しながら、治療のどの段階においても、それぞれの時期にリハビリテーションの役割があります。(図1)
当院でもがん種を問わず、がんに対する治療(手術・化学療法・放射線治療)が行われている(行われる予定)の患者さんに対してがんやがん治療によって生じる障害を見越して治療前や障害を生じる前からリハビリテーションをし、治療に伴う合併症や後遺症などを予防しています。(図2)
また、積極的な治療が受けられなくなった段階でも、患者さんとその家族の要望を十分に把握した上で、その時期におけるできる限り最善の対応を行っています。(図3)
〔図1〕国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービスより引用
〔図2〕厚生労働省 令和2年度診療報酬改定について 令和2年度診療報酬改定説明資料より引用
〔図3〕国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービスより引用