婦人科良性疾患に対する低侵襲手術
低侵襲手術とは
開腹手術と比較しておなかの傷が小さい(またはおなかに傷がない)手術で、体への侵襲(負担)が少ない手術のことです。腹腔鏡手術や子宮鏡手術などの鏡視下手術(内視鏡カメラを使用した手術)や腟式手術が含まれます。
![]() 開腹手術での傷 |
低侵襲手術では
・創が小さいことによる術後疼痛の減少、入院期間・社会復帰までの期間の短縮
・術後癒着の減少
・カメラによる骨盤内深部・強拡大視野での繊細な手術が可能、出血量減少
・整容性(傷の見た目)に優れる
といったメリットがあります。
適応疾患: 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、子宮頸部異形成、子宮内膜増殖症、卵巣腫瘍、子宮外妊娠、骨盤臓器脱、その他
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◇腹腔鏡手術 おへそを約1.5㎝、下腹部の3か所を5㎜切開し、カメラからの画像を見ながら手術器機(鉗子)を操作し手術を行います。 |
腹腔鏡手術での傷 |
ロボット支援下手術での傷 |
◇ロボット支援下手術 患者さんから離れた同じ手術室内のコンソールと呼ばれるコックピットでの術者の動きを、ロボットアームを介して鉗子に伝え操作します。手振れ補正や微細操作(モーションスケール)機能、多関節機能といった従来の腹腔鏡手術に無い機能が加わり、3Dイメージ拡大視野での精密な手術が可能となります。 |
vNOTESでは腹部に傷はない vNOTESでの腟から子宮卵巣へのアプローチ |
◇vaginal NOTES (Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)
:腟式経管腔的内視鏡手術
腟に手術器具を装着し、腟から内視鏡カメラや鉗子を挿入し手術を行います。従来の腹腔鏡手術の利点に加え、おなかに傷がないため術後の痛みがさらに軽減され、手術後の癒着の減少や、開腹手術の手術歴がある(おなかに癒着のある)方での安全性が高いといった利点があります。重症の子宮内膜症のように子宮周囲に高度の癒着のある場合や、子宮全摘後の方、性交渉経験のない方ではvNOTESは困難です。
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これら低侵襲手術の中から患者さんの状況に応じて最も適切な術式を選択します。
(低侵襲手術が困難な患者さんには開腹手術をお勧めします)
低侵襲手術のデメリット
・限られたスペースでの手術操作のため、高い技術が必要
・対象となる症例に制限がある
・腹腔鏡手術特有の合併症(皮下気腫、コンパートメント症候群など)のリスクがある
・手術前に予想されなかった癒着や合併症が起こった場合は、手術中に開腹手術に移行する場合がある
・手術時間が長くなることがある
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〇低侵襲手術スケジュール(共通)
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- 手術日を決定したら、手術日の2週間以内に手術前検査(血液検査・心電図・レントゲン検査など)と手術説明を行います。
- 手術前日に入院し、術後経過が順調であれば、術後4日目に退院です。
- 退院後は約1ヵ月後の術後検診で手術で摘出した検体の病理診断結果を確認します。