会長挨拶
第40回日本小児肝臓研究会を2024年7月20日(土)、21日(日)に岡山県北の作州津山の地で開催させていただくこととなりました。津山駅に降り立ちますと津山藩医・箕作阮甫(みつくりげんぽ)の銅像がお迎え致します。蘭学に長けペリーの親書の翻訳や、日本最初の医学雑誌『泰西名医彙講』、『外科必読』・『産科簡明』など多くの訳述書を著しました。また藩医一門の宇田川玄真は「大腸」「小腸」の医学用語や「膵」や「腺」という字を作りました。大山の南に位置する蘭学の郷に皆さんをお招きして、本研究会を開催させて頂くことを大変光栄に思います。
日本小児肝臓研究会は1984年(昭和59年)から白木和夫鳥取大学小児科教授(当時)が日本の小児肝臓病診療の充実・発展のために主催された「大山小児肝臓ワークショップ」として始まりました。6回目の年に私は学生でしたがスライド係として初めて参加させていただきました。夜中まで話しが盛り上がり、特に小池通夫先生(当時和歌山県立医大教授)が栄養について若い先生方に熱く語っておられたことが強く印象に残っております。後にワークショップは日本小児肝臓研究会と名を改め全国各地をめぐり、時々の課題について熱い議論が交わされ、病態の理解が深まり、診断や治療のコンセンサスが醸成されてきました。
診断のつかない症例や治療に難渋している症例について、この研究会で議論することで解決の糸口がみつかることも多く、私も2007年に診断に困っていた症例を提示させていただき、ミトコンドリア肝症の診断に導いていただきました。私は大学院で白木先生の御指導によりC型肝炎の母子感染に関する研究をさせていただきましたが、HCVのPCR検査ですら当時は研究施設でしか行っていないものでしたので、多くの稀少疾患の診断は研究施設を探すことから始める時代でした。胆汁うっ滞をきたす多くの遺伝性疾患の診断は、本研究会のネットワークをたよりに、多くの疾患の除外をすすめていくオデッセイであり、肝臓病探検でした。本研究会の皆さんのご尽力で臨床像や生化学診断、病理診断に加え多くの疾患の分子学的診断が可能となり、「乳児黄疸ネット」、「CIRCLe」、「小児急性肝炎ネット」など診断への道先案内も整備され、さらに困難と思われた治療への扉も開かれて来ています。
今回のテーマは「それゆけ!肝臓探検隊」としました。教育講演は私自身が迷いつつ診断と管理にあたらせていただいたミトコンドリア肝症について、病態解明、診断体制確立、更に国際連携をおしすすめておられる村山圭先生にお話いただきます。また現在肝移植施設と連携しつつ津山で診させていただいている進行性家族性胆汁欝滞症1型について病態解明から治療への研究をすすめておられる林久充先生のお話も聞かせていただきたいと思いお願いいたしました。
一般演題も広く募集いたします。とくに診断や治療に難渋しておられる症例などありましたら、是非ご提示いただき、難問解決の糸口が得られればと思っております。
長くなりましたが、また新たな感染症や台風が来ないことを祈りつつ皆様のご参加をお待ちしております。
■お知らせとお願い
今回は診療のため遠方へ出張できない先生や、部分参加の先生方にも御視聴いただけるようWEB配信を併用いたします(ご発表の先生は津山にお越しください)。
初日は10時開始を予定しております。 遠方の先生は前泊が楽なように思います。
夜は懇親会にて「嫁泣かせ」、「干し肉」、「煮こごり」などお肉を余すことなく食べてしまおうという作州の文化を感じて頂きたいと思っておりますので是非ご参加ください。
2日目の朝のセミナーは事情によりやや遅い時間帯となり、研究会からの朝食はありませんので、ご朝食はお摂りになってお越しください。
懐かしの写真がございましたら、是非スキャナして思いでのメッセージとともに学会本部へメールください。
第40回日本小児肝臓研究会
会長 梶 俊策
(津山中央病院 小児科)